今回は、女性の年齢が上がると、妊孕力(にんようりょく、妊娠する力)が落ちるのか、もう少し詳しく、理由を含めて説明していきたいと思います。
生物学的には、20歳代が、女性が妊娠するのに最も適した年代です。妊孕力は、30歳代になると段々低下し、とくに35歳以降はさらに低下していきます。
健康な30歳の女性は、毎月、妊娠を目的に性交渉を持つと、一サイクル(月経周期一周期、平均28日前後)で、約20%の確率で妊娠します。これは100人の健康な女性30歳の100人が1周期、妊娠を目的に性交渉を持った場合、20人が妊娠に至り、残りの80人は妊娠に至りません。
40歳になるとこの確率は5%以下になります。すると、健康な40歳の女性100人では、1サイクルで5人未満の人が妊娠に至り、残りの人は妊娠に至りません。
前のブログにも書きましたように、女性は閉経に至るまで妊孕力が保たれているわけではありません。閉経年齢は、平均51±5歳ですが、一般的に40代の半ばには、女性は妊孕力を失います。
これら妊娠に至る確立は、自然な性交渉によるものだけでなく、前に示しました通り、体外受精、顕微受精といった生殖補助技術:ARTを使った場合でも、ほぼ同じです。しかしながら、最近、テレビのニュースや新聞、雑誌といったメディアでは、高齢で妊娠した方のニュースも多々流れており、治療をすれば、歳をとっても妊娠できるのでは?といったような印象を受ける方もいらっしゃると思います。
さて、年齢が上昇すると、なぜ、妊孕力が落ちるのでしょうか?
妊孕力の低下の原因には、大きく二つあり、一つは卵子の質の低下、もう一つは、卵子の数の低下と考えられています。女性の年齢が上がるにつれ、妊娠率は低下し、一方で流産率が上がります。これは卵子の質が低下している事が原因と言えます。この卵子の質の低下は、特に30歳の半ばから後半より明らかになってきます。それ故、女性の年齢は、卵の質を評価する、最も正確な指標と言えます。
さて、卵の質が低下とは、具体的には卵子に何が起きているのでしょうか? 通常卵子は、23本の染色体を持っています。精子も同じく23本の染色体を持っており、受精すると、受精卵は46本の染色体を持つようになります。ところが、卵が老化すると、卵が発生する際に、染色体の数の異常 (異数性、染色体の数が23本より多い、または少ないもの)の発生頻度が高くなります。染色体の数が多い、または少ない卵子と精子が受精すると、染色体数が46本ではない受精卵が出来ます。
一般的な異数性の例としては、21トリソミー(21番染色体が3本あり、全部で染色体が47本ある)であるダウン症候群があります。
35歳から39歳の女性の場合、受精卵の約20%に、40歳以上の場合、約40%の異数性が見られることが、報告されています。
一般的に、この異数性を持った受精卵は、妊娠に至らないことが多く、また妊娠に至っても、流産することが多くなります。
2 件のコメント:
こんにちは。勉強になります。このような記事を読んで子供を持ちたいと思っている若い人は、よし、今のうちにがんばろうと思うと思うのですが、もうすでに年齢があがっている人たちはどのようにすればいいのでしょうか?何か良いアドバイスはございますでしょうか?
著者です。コメントありがとうございました。年齢が少しあがっている方にも、また、そうでない方にも、自分で出来ることを、ぜひ次回より、少しずつ触れてみたいと思います。
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