2014年12月15日月曜日

麻生太郎氏「子ども産まないのが問題」についてのインタビュー記事が掲載されました

 コラムを連載しているDoctors Meのサイトで、麻生太郎氏「子ども産まないのが問題」についての不妊治療に携わる産婦人科医としての立場から、インタビューに答えた記事が掲載されました。

https://doctors-me.com/doctor/column/409

12/17 追記 反響を呼びましてYahoo!ヘルスケアのアクセスランキングでも2位を
取りました! お読み頂きました皆様、どうもありがとうございます。

以下、サイトに掲載されたインタビュー記事です。

麻生太郎氏「子ども産まないのが問題」波紋呼ぶ。

今月7日(日)札幌市内での衆院選応援演説で、麻生太財務大臣が「子ども産まないのが問題」と発言したことについて波紋が広がっています。

文脈としては、少子高齢化がこのまま進むと、社会保障費の負担額が増加することに対して「"高齢者が悪い"みたいなイメージ作ってる人がいっぱい いるけど、子ども産まないのが問題なんだからね。長生きするのが悪いこと、みたいなことを言ってもらっちゃ困りますよ。」という内容でした。(全文

ネットでは「産まない」のではなく「産みたくても産めない人」がいることを置き去りにしている点が、論争を呼んでいます。

今年の6月には東京都議会で女性議員に対し「結婚しろ」「子供を産めないのか」といったヤジが飛び、問題となったニュースがあったように、"女性 の活躍"を日本の成長戦略として掲げているにも関わらず、その中心である議会、議員の女性への認識がまだまだ甘いようにも捉えられます。
 
まず、産婦人科専門医として日々、妊娠を希望する女性や、希望していてもなかなか産めない女性の治療やお話を聞いている、樽井智子先生にお伺いしました。

Q1:今回の「子どもを産まないのが問題」という発言は率直にどう感じましたか?

『子供を産まない』のではなく、『子供が産めない』 状況にあるカップル、特に女性に対する配慮が見られない発言、男性ムラ社会にいる方の発言と感じました。

実は、今回の麻生氏の発言は、氏の支持者(主に中高年の有権者)に向けて、少子高齢化について話をしていた際の言葉で、『子供を産まないのが問題』には、明確な主語がありませんでした。

中高年の有権者に向けて話しており、主語が、「あなた」か、「あなたの子供世代」か、「世間一般の女性」かは、はっきりしません。ですが、『産む』のは、女性だけが出来る事です。
発言の後半で『子供が生まれないから』、少子高齢化になる、と言っており、『子供を産まない』『女性』だけを非難するつもりは、なかったのかもしれませんが、『子供を産まないのが問題』と言われれば、主語は『女性』と取られて仕方がないと思います。

『少子化=女性が生まないのが問題』、と思っているのではないのであれば、言葉をもう少し慎重に選んで使って頂きたかったです。

以下麻生氏発言抜粋:(全文
「それをしない限り日本の場合は少子高齢化になっていって。昔みたいに働く人6人で高齢者一人の対応をしていたものが、今はどんどん子 供を産まないから。なんか高齢者が悪いようなイメージを思い切り作ってる人がいっぱいいるけど、子供を産まないのが問題なんだからね。長生きしたのが悪い ことなんか言ってもらっちゃ困りますよ。子供が生まれないから、結果として子供3人で1人の高齢者、もう少しすると2人でひとりになります。(以下略)」

Q2:何故このような発言がつい出てしまうのでしょうか?

子供を産み、育てる現場にいた事のない男性だから、こういった発言をしてしまうのだと思います。

さらにその背景には、
第一に、多くの男性は、少子化の原因は、女性にある、特に子供が出来ない不妊の原因は、女性(だけ)にある、と考えていること。(著者注;不妊の原因は、男女半々です。参考

第二に、与党自民党にも野党にも、政治の場には、女性、特に出産・子育てを経験した女性政治家が少なく、男女分業、子育ては女性がする仕事、といった古い男性的な考え方が、 政治家の考え方の主流であること。
があると思います。

本来、子供は、カップルで作り、産み、育てていくものではないでしょうか?

Q3:問題を提起しつつ、誤解を与えないためにはどういった発言が良かったのでしょうか?

一般的に、子作り=性交渉、なので、妊娠・出産に関する発言は、注意していないと、セクハラになってしまう可能性が高いです。

男性がセクハラ発言をしない為には、今話している相手の女性が、自分の恋人、妻、娘、孫娘だったら、同じ様に話すか?どう話すか?と、言葉に出す前に考えていただければ、セクハラ発言にならなくなると思います。

また、出生率低下=女性が生まないのが問題、と考えられがちですが、女性が生まないのではなく、産めない、産みにくい現状があります。少子化の原因・責任を全て女性に押し付けるような発言、考え方は、ぜひ改めていって欲しいと思います。

そして、会社の同僚、近所の方、親戚などからの『お子さんは?』『子供はまだ?』といった本人には悪気がない言葉によって、生みたくても産めない人が、傷つけられています。

正しい知識やデータを知り、その上で、頭で理解するだけでなく、その現場にいる人ときちんと対話をし、その人の立場・現状を心から理解していれば、自然と、不適切な発言はでてこなくなると思います。

Q4:本件をふまえ、今後政界や施策に期待したいことを教えて下さい

価値観やライフスタイルが多様化している中、政治家は、少子化対策の必要性について、改めて示しながら、議論を進めることが必要と考えます。

政治・行政の仕事は、国民一人一人を幸福にすることではないでしょうか? 少子化対策の際には、くれぐれも「産めよ 増やせよ」という誤ったメッセージが伝わらないようにしながら、「産みたい」という希望を持っていても、様々な事情でかなわない人にプレッシャーを与える ことなく、「産める」環境作りをして頂きたいです。

ライフステージの、「結婚・妊娠・出産・育児」の各段階において、子供を産むのを妨げる原因・要因があり、また特に「出産・育児」については、第1子、第2子及び第3子以降ごとに、異なる阻害要因があると考えます。

特に働く女性の立場から考えると、 女性人材の活用と出生率の回復を共に実現するには、ワークライフバランスの達成できる社会の実現が不可欠だと思います。

ワークライフバランスの達成には
・育児と仕事の両立支援
・柔軟に働ける環境の実現

の2つが必要です。

妊産婦が安心して出産・子育てできる社会を作るためにはどのような取組が必要か?
生命を生み、育むことの大切さへの理解をどのように広げるか?
を踏まえて、きちんと予算を与え、有効な政策を作り、実行していって欲しいと思います。



0 件のコメント: